さよなら、そして前進。Native Wood(s)のMiki&Taroが届ける『Peace Out』のメッセージ【リリースインタビュー】
群馬県と長野県の境に拠点を置くアーティストクルー「Native Wood(s)」。彼らはUSオールドスクールヒップホップや、ビンテージファッション、クラシックカー、バイクにインスパイアされ、豊かな自然の中で育まれた独自の感性とスタイルを確立している。
MikiとTaro、2人の初シングル「DAY TODAY」リリースから1年半。個性が光る印象的な作品をリスナーに届けてきた彼らが11月16日にリリースした新曲『Peace Out』は、懐かしさとクールさを感じさせるラジオ音からはじまる、彼らの「これまで」の経験と「これから」の決意が投影された一曲だ。
本インタビューでは、「さよなら」を意味する『Peace Out』の楽曲タイトルに関連し、MikiとTaroが、自身の人生で「さよならを告げたもの」と「告げなかったもの」、そして「楽曲の制作背景」について聞いた。
まずはぜひ一度、『Peace Out』を聴いてから。
Native Wood(s)
群馬県と長野県の県境を拠点にするアーティストクルー。USオールドスクール HIP-HOPやビンテージファッション、クラシックカーやモーターサイクル等、「古き良き」に囲まれた日常からインスピレーションを受ける。幼い頃から大自然の中で育まれた感性を独自のフローとワードセンスで表現し、唯一無二のスタイルを作り上げる。
自分にとっての「Peace Out」とは
Mikiの選択:安定との「Peace Out」、音楽とアパレルに賭けた瞬間
今までで一番難しかった「Peace Out」は何ですか?
Miki:僕は、社会人をやめる時かな。社会人をやめるっていうか、安定の道から外れるっていうんですかね。音楽よりも先に、Greened mind™っていうアパレルをKiichi(Native Wood(s)メンバー)と進めるっていう目的で前職を辞める時が、結構大きな選択だったなと思います。期間でいえばそんなに考えてはないけど、深く自分を掘って考えてみた。
大きな決断ですよね。それが、正解だったなと思ったタイミングはありますか?
Miki:死ぬときまで「正解かどうか」はわかんないと思うんですけど、ただ辞めた後から、アパレルをスタートできたり、ポップアップとかやらせてもらえたり、音楽だったらライブに呼んでもらえたりして。協力してくれる人が増えた時に「もしかしたら正解なのかもな」みたいなのは感じますね。当時のマインドと今のマインドを比べても、「正解」のレールには乗ってるような気がしてます。
マインドレベルでの違い。例えばどんな違いでしょうか?
Miki:今は、“ちゃんと”目標があって、それに“ちゃんと”向かってるなというか、向き合ってるなみたいなところですかね。 正社員として働いた時は、よく言う「会社の歯車」っていうか、別に自分じゃなくてもできることをやってるなとか。
アパレルを始めて、自分だけができることをやるし、目標に向かって進めているという?
Miki:会社員の時も目標はあったはずなんですけど。一番ゾッとしたのは、入った時に、「1年後、2年後、5年後、10年後のお給料は大体これぐらいだよ」と見せられた時。「ほぼ決まってんだ」みたいな。目標があったはずだけど、消されたというか、もう提示された時点で、やる気なくなっちゃう。
自分たちは、確かにまだ今はお金も稼げてもないし、経済的に安定もしてないけど、それに約束もされてないけど、今の方が目標に向かって進めてる気がしてるんですよね。なんかワクワクするのは、前との違いかなと思います。
Taroの挑戦:ネガティブな自分との「Peace Out」
Taroさんにとって難しかった「Peace Out」は、いかがですか?
Taro:あるネガティブ、闇を持ったような人との出会いと別れですかね。それが、自分の人間性を振り返って、改めるきっかけになったかなと思います。
素直に心が喜べていない言動とかを見て。思いやりを持って接すればそれで終わった話なのに、そこでなぜか尖って見せるみたいなのって、コントロールできるようで、意外とできないじゃないですか。自分のイラつきにまかせて何か言っちゃったりとか。改めて、人を思いやるためには、やっぱり自分をコントロールするスキルも必要なんだなと、と結構考えさせられました。「自分自身絶対そうだろうな」って気づけるきっかけになったと言うか。
その人と自分を重ねて振り返ったんですね。その人との別れは自分にとって「正解」だったんでしょうか?
Taro:やっぱりその相手を見て、自分にも当てはめて「直してみよう」と気づきを得られたのは、一種の「正解」だったかなって思います。そういうネガティブって人にも伝染しまくっちゃう。こういう勉強が俺にも必要だったんだなっていう。
ネガティブをプラスにとらえられているのが、素晴らしいですね。
Taro:Native Wood(s)はポジティブマシーンばっかりです(笑)俺たちは、ダメなこととか、いいこととかも言い合うクルーだと思うんですよ。それがなかったら、自分の武器とかにも気づけなかったんで。最近、それを全員が認識しはじめて、「自分にはできない」とか、いい意味でプライドを折ることもあるみたいな。みんなある意味、ネガティブとの「さよなら」ができてきた感じがします。
ネガティブって捉え方次第でポジティブにもなるものもあれば、本当に悪いものもありますよね。判断が難しいですね。
Taro:ネガティブっていいものと悪いものがあると思ってて。人間の本能的に、絶対必要なネガティブってあると思うんです。Mikiが言ってた、「これは合わない」っていうのも一種のネガティブだし、それがあるからこそ、今好きなものに向かえているっていう。
いいネガティブと悪いネガティブの違いが、ようやく明確になってきた。必要なものと、そうじゃないものと。俺は結構不安症なんで「絶対考えなくてもいいやろ」ってこととかで迷いがちになるんですけど、仲間同士でケツを叩き合ってます。
「Peace Out」を告げなかったもの:自分のやりたいことを追い求める
逆に「Peace Out」を告げなかったものでいうと、いかがですか?
Miki:「自分のやりたいこと」ですね。もともとずっとアパレルをやりたくて、ずっと独立したいって思っていて。前職がアパレルの商社だったんですけど、作り方をある程度まなんで、独立しようっていう流れでした。
ただ、自分の中でも迷いがあったから、大学卒業のときに一旦ちゃんと就活して、そっちの道にも行ってみた。世の中的な「正解」みたいなものって、“大学卒業のときに企業に入る”ことだし、大学にも行ったわけだから、一旦そっちも見てみたいっていう好奇心もあって。でもやってみて、「やっぱりやりたいことやりたいわ」ってところに行きつきました。「やっぱり自分のやりたいことには別れは告げられないな」って感じでしたね。
挑戦と後悔:「Peace Out」の先に見えた自分の成長
「Peace Out」を告げてきて、後悔したことってありますか?
Taro:自分がもっと未熟だったころ、周りの意見に流されて、「そうなんだ」って思っちゃってそのまま行動したことですね。今になってめっちゃ後悔してるっすね。もっと自分の「好き」か「嫌い」かを信じるべきだったなって。
Miki:僕の場合は、ガチでないですね。生きているといろいろ選択が迫られるし、その状況で持てる選択肢の幅も変わってくるじゃないですか。でも、自分の中でベストを選んでいけば、仮に将来的に失敗したとしても、「あの時あの状況で一番いい選択をしてたし」って思って、後悔できないなって。
すごくいい考えですね!そう進んでいけば、振り返って考えたときに、あの時のベストの選択だったから「仕方ない」となりそうです。
Miki:ただ、愛犬が最近死んじゃったんですよ。僕は外出なきゃいけなくて、顔近づけてちょっとなでるくらいで「バイバイ、行ってくるね」って行ったらもうそのあと病院行って逢えなくなっちゃった。その時人生ではじめて後悔しました。体悪くなってから、顔近づけて「ほんといつもありがとう、ずっと一緒だよ」ってテレパシーを送ってたんです。それでも十分だと思ったんだけど、やっぱ最後の最後、そういう別れになるとやっぱり後悔しちゃうんです。
お線香をあげるのもそうだし、後悔はしてるけど、近くに感じておくことが一番大事だなってっていうのが、最近思ったことでした。想ってあげる、忘れないでいること。
群馬と東京、2つの拠点で見つけた理想のライフスタイルと新しい出会い
活動の幅を広げるために、群馬から上京されたんですよね。大きな「Peace Out」の決断をされたと思いますが、現在の心境を教えてください。
Miki:ワクワク。辛いこともあるけど、ワクワクが勝つから、できちゃうみたいな。
Taro:ほんと単純なところで言ったら、都会は居心地が悪くて(笑)逃げるように群馬に帰ることとかもあります。感情が入り混じりまくってるところとか。
Miki:情報量が多いとか、人の距離、家の距離が近いとか。そういうところもあるけど、やっぱり活動は東京で広げるべきかなって。
Taro:実際広がってるしね!
Miki:言ってしまえば、わがままだと思うんですよ。東京に住まずして「東京で活動を広げたい」っていうのが。でも、ストレスを感じることもあるし、クリエイティブに影響することもある。それでベストは、2拠点生活。東京に1拠点、群馬にはみんな住む所があってっていう状態が理想なので、そこに向けて頑張ろうっていう状況ですね。
Taro:Native Wood(s)はアイディアに行き詰ったときとか、みんなで川に行ったりとかします。一旦頭の中を整理するのが、自然の中なんで。
上京するまでには、どんなことを考えていましたか?
Miki:葛藤は、そんなになかったんじゃない?上京するまででいうと。
Taro:なんなら、ワクワクしかなかったですね。むしろ来てから、いろいろ食らったっていう方が多かったかも(笑)。割とみんなすんなり「行っちゃおうぜ!」って感じでしたね。東京でのライブブッキングも増えたし、もっとあっち(東京)のヤバい人たちと知り合いたいっていう。結構ワクワクが大きかったかな。
実際に知り合えましたか?
Taro:いやー、めっちゃ知り合えたんじゃないですかね。MVを撮ってくれてるKen Harakiとか、イベントに呼んでくれるレントとか。ありがてえっす。
Ken Harakiとかは、俺らが勝手に「群馬に行くぞ!」って連れて帰ったりして(笑)。あっちも食らってくれて、今後も一緒にやろうって感じになってます。結局、ソウルの部分というか、根本的に思いやりを持ってる人とは寄りやすいですね。
「Peace Out」をテーマにした楽曲に込めたメッセージ: 「さよなら」と「救い」
今回のタイトルはさよならを意味する「Peace Out」。どんなときに生まれた楽曲でしょうか?
Miki:社会で生きていると、「ネガティブ」「闇」みたいなものにとりつかれてしまってる人に出会うこともありますよね。ちゃんと言うことを伝えても、「聞く耳持たず」みたいな感じで受け入れてもらえなかったりして。そういう人からは、最終的にみんなが離れて行っちゃうこともあると思うんです。でも、「いつでも戻ってきていいよ」という救いの意味を込めて、僕たちは曲で伝えるしかないなと思って作りました。
会社に入って1年目2年目…と重ねていくと、社会の”在るべき”に染まって気づかなくなっちゃう人もいると思うので、そういう方にすごく響きそうですね。リリックのこだわりポイントはありますか?
Taro:今回は本当に2人で作り込んだんですよね。いつもはそれぞれ担当を分けて作ってから、あとで合わせて曲を全体的に仕上げていくことが多いんですけど。Mikiの得意な英語と、俺が日本語を使う、このいい感じのバランスが取れているというか。フックのリリックは全部大好きです!……って、それじゃあ回答にならないか(笑)。
フックのWhat’s my identity〜のところとか、私もかっこいいなと思います。
Taro:そうっすね。”What’s my identity”、めっちゃかっこいいね。それこそ、音を自分が作って、Mikiがその気持ちいい言葉をはめるみたいなのが行われるときがあるんですよね。Mikiの得意な英語が当てはまる。それがまさに “What’s my identity” で、もう完璧だったね、俺的にも。
Taroさんのバースでいうと?
Taro:「なるな孤独に聞けよ心に 周りがいなけりゃお前はここには立ってない」っていうラインがあるんすけど、これとかはもろ救いの意味を込めたメッセージとして作ってますね。
闇を抱えている人がまわりと離れて一人になっても、精神的に結局成長できないって場面も多いじゃないですか。誰かに教わって、認めて初めて、自分のなかに落とし込めるというか。言ってみれば、一人になるって「1番簡単な道」だと思うから、それをリリックで表現できたぜ、イェイって感じですね。
Miki:「愛に気づけば深まるこの歌詞」。この曲はこれに尽きるなと思ってて。本当に“そこ”に気づく=自分のプライドみたいなのをなくして、いったん全部受け入れて、「愛」に気づけば全部この歌詞の意味が分かるよっていうところかな。
確かにこの1つの言葉が、歌詞すべてをまとめているって感じがありますね。Mikiさんのバースではいかがでしょうか。
Taro:Mikiのバースでめっちゃ気に入っているところがあって。最後の4小説とかになるんですけど、「角が取れてない大人たちへ問う。変化恐れて進んだ末路どう?」っていう表現をするんすけど、Mikiが。
なんかもう、うまく言えないですけど、皮肉も効いてるけど、disではないっていうMikiらしい和らげ方。自分のスタイルも確立してるし、ラッパーだなあって。言葉を操っている感じがしますね。
Miki:自分のとこで本当に伝えたいメッセージは、Taroが言ってる最後の4小節の部分がメインなんだけど、もしこの最後の4小節だけ歌ってたら、ネガティブを生む人たちへのヘイトで終わっちゃうというか、皮肉で終わっちゃう。だから自分なりにその前提として、 「プライド捨てて扉knock knock 来るもの拒まないよNo more」って言ってるんです。相手が改心したり、ちょっと自分の考えが変わったときに、僕らのドアを叩いてくれても構わないよっていう気持ちを込めて。
バランスですね。優しさを感じます。
Taro:やーほんとバランスいいですよ。
Miki:そうですね。も、優しさだけだと自分たちもそのネガティブに引っ張られちゃうから、言うことは言うっていうのは必要だなと思いますね。
この曲『Peace Out』をどんな時に聞いてほしいですか?
Miki:なにか選択に迫られているときとか、踏み出したいけど踏み出せないときとか、自分の気持ちをはっきりさせたいときに聞いてもらえたらと思います。
Taro:まったくその通りだと思いますね。気合いを入れてもらう曲としても、最高かなと。あとは、俺らは常に自然とともにあるし、ドライブ中に曲を作ることも多いんで、ドライブ中とかに聞いてもらえたら嬉しいですね。
今後のライブ情報は、Native Wood(s)のInstagram、MikiのInstagram、TaroのInstagram、TIAMiesの公式Xでぜひチェックを。
リリース情報
『Peace Out』Native Wood(s)
リリース日:2024年11月16日(土)00:00
配信リスト
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