俺ららしいけど、自分らしい。東京発ヒップホップクルー Y’s CAMPが愛にあふれた音楽を作り続けられる理由

俺ららしいけど、自分らしい。東京発ヒップホップクルー Y’s CAMPが愛にあふれた音楽を作り続けられる理由


―「こんな人数が20代半ばになって、遊びながら、笑いながら、楽しみながら、同じようにやれてるのは奇跡的なことに近い」

2月14日に1st EP『C.A.M.P』をリリースした、東京発の“ジャンルレス”ヒップホップクルー Y’s CAMP。2023年9月には長野・松本市で毎年開催される野外フェス「りんご音楽祭」に出演し、メンバーそれぞれの視点で過去、未来への祈りを歌う『Prayers』などで、結成当時からのファンをふくめ会場を盛り上げた。

Rui、tity、RYUらを中心に世田谷で結成されたYURINOKI AVENUEと、TENMA、mihiroらが所属するYellow GangがY’s CAMPの前身であり、学生時代(メンバーによっては、幼少期からの幼馴染)からの友人同士がつながり、自然とクルーが大きくなっていったという。MC7人とDJ1人、Creative Membersたちの総勢13人の大所帯だ。


ー彼らのライブで感じた、お互いそしてまわりへの「感謝」。


好きな音楽やラッパー、性格も強みも異なるメンバーが集まる。歌詞やフロウ、歌い方、ファッションからもわかるような個々の「自分らしさ」を活かしながら、Y’s CAMPらしく、そして共通する想いでありコンセプトでもある「Love & Peace 」にあふれる音楽を作り続けられる所以はそこにあるのか。

パフォーマンス中は、大きな笑顔を見せながらも真剣そのもの。ステージを降りれば、夜中の公園でたわいもない会話に笑い合うY’s CAMPに、自分たちらしさや、大切にしていること、支えてくれる人たちやメンバーへの想いについて話を聞いた。



MC: TENMA、mihiro、RYU、Rui、troy、tity、ISHI
DJ: TAKUMU
Creative Director:Tigre Aoki
Video Grapher :YAMA-SAMA, NOW
Maneger




「Y’s CAMP」らしさをつくる要素

ーまずは一人ひとりについてうかがいたいです。それぞれ、どんな音楽を聴いていますか?


TAKUMU:毎日気分やシチュエーションで変わるけど、きれいなサウンドを基調とした心地いいサウンドに惹かれますね。Soul、R&B、Neo Soul、Jazz、Reggae(Lovers Rock)Disco、Houseを聴くことが多いです。

troy:同じくそのときの気分や状況とかで変わるけど、最近聴いてるのは、Joey Bada$$(ジョーイ・バッドアス)。23年の9月に来日したことをきっかけに聴き始めて、ビートや彼のflowの耳心地が良くて聴いてます。

ISHI:ラップを聴き始めたきっかけは、Japanese Hiphop。19歳の頃にバトルをけっこう見てた影響もあって、今もパンチラインを求めて聴いてます。

最近聞くのは、CHICO CARLITO(チコ・カリート)っていく沖縄のラッパー。「Never Go Back」って曲聴いたとき、リリック(歌詞)がそのまま心に入ってきて「うわー、食らったあ。 俺もやったろ」って感じでしたね。



ー音楽を作るにあたって参考にしている人、影響を受けているアーティストはいますか?


TENMA:Jay-Zとか、Kanye WestはHiphopを好きになったきっかけのアーティスト。中1くらいの頃に、兄貴の部屋に勝手に入って物色してたら、CDアルバムが結構あって。英語で何言ってるのかわかんないけど、「なんだこれかっこよ!ノれる!」みたいなのが最初だった気がします。

ISHI:背中を追うってわけじゃないけど、CHICO CARLITOみたいな音楽の在り方を目標としています。道に迷ってる人だったり、友達に対して、自分の音楽でストレートに光を与えたいという想いがあるから。

mihiro:一番好きなのは、KOHH(コー)ですね。KOHHに影響受けてラップを始めてるし、生き方とかも教えてくれた人って感じ。「人と一緒はだめだよ」とか、「友達大事にしろよ」とか、「お金は別にそんな重要じゃないよ」とか。それを直接言うんですけど、なるほどなあって。


TIAMies_yscamp_mihiro

troy:影響を受けてる人や、目標にしている人はいないですね。音楽をやろうとしたときに、誰かになろうと思って始めたわけではなくて、自分という存在を表現するための手段だったから。幼稚園でピアノを習い、小学生でチェロを始め、中学生ではUKロックにハマって同級生とバンドを始めてギターをやっていたり、4つ上の姉の影響で洋楽をよく聴いていたり。

ただ、自分が思い描いている理想像は、人間性(靈性)の高い人物になることですかね。仕事、学歴、ステータスや持っている富の数ではなく、「その人自身がどんな人間か」をすごく重要視しています。



ー大切にしていることが、音楽との関わり方や聴いているアーティストからも伝わってきますね。音楽を聴いてるっていうよりは、その音楽を作る人たちの人間性から学んでるって言う感じがします。


RYU:ラップっていうのは、どういう生い立ちか、バックグラウンドがわかればわかるほど聴くようになるというか。良くも悪くも。本当のことを言っているのがいい。

mihiro:ラッパーはリアルだからね。良い曲のやつは良いやつって感じだったりします。でも、J-Popとかの他のジャンルは、裏で別の人が歌詞つくってることがあって、個人的には別の人が作っているとか、フェイクはちょっとやだなって。



ー個々の「自分らしさ」は、歌詞にも歌い方にも反映されている印象があります。Y’s CAMPとして一緒に音楽をやっていくにあたって大切にしていること、大切だと思うことは?


RYU:それぞれが違うところで感じたインスピレーションを集め続けること。誰かに偏るとバランス悪くなるかなと思います。各々が日常で感じたことを、俺らの音楽にエッセンスとして加える。結局は全員好きな音楽も、聴いてる曲も違うし。

TAKUMU:“俺ら”らしさをなくさないこと。俺的には上品な格好良さを追求したい気持ちもあるけど、背伸びしすぎた音楽をやるのも俺ららしくないと思うし、Hiphopでもないと思う。そのバランスを大切にして、全体の化学反応を大事にしたい。“等身大”っていうのを意識して、自分たちの周りの“リアル”を伝える。嘘つきにはなりたくないから、メンバーにはリアルな歌詞を作ってほしいですね。



ーみんなで決めたコンセプト「Love & Peace」は、それぞれどう捉えていますか?


TAKUMU: 「ピース」の部分の願い・気持ちが強いのはTENMA。俺は「ラブ」の部分かな。俺がでっかい世界平和を掲げるのは難しいけど、周りの人を支えたり大事にしたりするほうが得意だし、大切にしたいことです。

mihiro:俺もどちらかと言えば、共感性とか、周りの人を助けるためだったりします。周りの人が幸せでいてくれるために歌ってますね。個人で違うけど、「Love & Peace」は一緒みたいな感じ。  



ー同じコンセプトのもと活動しているけど、音楽を通して伝えたいことは違うんですね。そのうえで「Y’s CAMPらしさ」ってなんでしょうか?



RYU:“自由なところ”じゃないですかね。決まったメロディばっかりをやるアーティストもたまにいるけど、Y’s CAMPはそうじゃない。それぞれが受けたインスピレーションをそのまま出せるんです。

TENMA:十人十色じゃないけど、それぞれの違いが Y’s CAMPとしての重要な要素の一つになってる気がします。だからおもしろくて、みんな同じだったらつまらない。当たり前のことだけど。

mihiro:みんな「自分」を持ってるけど、それが一緒になるとまとまりを感じる。仲の良さ。一丸となっている感じがある。“モブ感”っていうのかな。ライブ中もだけど、みんなが同じ方向を目指して動いている。


強みがパズルのように組み合わさる

ー一緒に音楽をつくるなかで、メンバーの「○○らしいな」、「ここすごいな」ってところは?


ISHI:troyは客観的な視点を持ってるのがすごい。どうY’s CAMPが見えてるかっていうのを、いつも考えていますね。服装とか、ライティング(照明)どうしようとか決めるのはtroyかな。

mihiro:ライトの指示も紙にびっしり書いて出してくれたりします。ほかのアーティストはあまり出してないけど。毎回調整してもらってて、俺らのこだわりの部分でもあるよね。 


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ライブ出演時の照明担当への指示

mihiro:TENMAもこだわりは強いほうですね。自分が納得した曲じゃないとやらない印象。

tity: 良い意味で強引さがあるよね。意外と引っ込み思案で、ガツんといかないメンバーが多いんだけど、TENMAにはそういう俺らまとめて「こっちいくぞ!」ってやってもらうことが多い。

RYU:tityは「自分の世界観」を表現できていることがすごいと思う。曲を聴いて、tityって一発でわかる。似ている人がいない。リリックも一番解説必要だからな… 「曼荼羅(マンダラ)」(『BY YOUR SIDE』の歌詞)とかの意味聞いたら喜ぶぞー(笑)

tity:Ruiは言葉をストレートに伝える力、メロディーセンス、スタミナ。難しいことは伝えず、わかりやすい言葉でバンっと伝えるのがすごいし、キャッチーなリズムをつくるのがうまい。RuiがいなかったらY’sってまとまらないっていうか。あのメロディーがあるから、見てくれる人にひっかっかてくれるのかなって思いますね。ほんと、Y’sという宇宙船を操縦している感じ。

TENMA:RuiとRYUは対称的ですね。表現方法ももちろんだけど、RYUはより俯瞰的というか。自分視点で語ってるけど、冷静さがあるのがかっこいい。シンプルにラップがうまい。



ーお互いの性格や強みを生かして運営しているのが伝わってきます。行き詰まったなってとき、お互いに相談することはありますか?クルー内でお互いに助けられているなって感じる場面は?

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tity,mihiro,ISHI(左から)

tity:俺はあんまり人に相談しないですね。でもほんとなんかあったときに話すのは、troyとRuiだね。同じ次元を生きてるというか、深い部分で通じ合ってるからかな。

TAKUMU:本当に行き詰ったときにはtroyに話すことが多いです。『BY YOUR SIDE』をつくったときも、まずtroyに持ってったし。人生に行き詰りを感じて仕事を休んで、地元長野に帰ったときに助けてくれたのも、troyでした。



troy:適材適所でみんなとコミュニケーションを取っていますね。プライベートなことを含む具体的なアドバイスがほしいときには、TENMAに相談するかも。TENMAなりの答えを出してくれるから。自分だったらどう考えるのかっていう、“具体例”を出してくれる。

ISHI:地元が一緒のメンバーには昔から決断のときに助けられてるし、20歳過ぎてから出会ったメンバーはプライベートでもキツいときに側にいてくれるし、音楽で迷ってるときにふとした一言をくれる。ファンの人達にも助けられてるけど、メンバーへの感謝はいつも忘れないですね。

TAKUMU:実際のところ相談する相手は、シチュエーションによるかもしれないですね。Y’s CAMPはけっこういつも一緒にいるしね。



ー理解し合っているからこそ、互いの必要なタイミングで声をかけあえるんですね。初期のころはどうでしたか?


tity:みんなのモチベーションが合ってないから、音楽に対しての向き合い方も違ってて。それが、音源制作やライブの準備不足とかに繋がっていました。

継続していろいろなイベントに出ていくに連れて、ライブに来てくれる人とか、曲を聴いてくれる人が少しずつ増えてきたことで、俺もだけど、みんな前よりも自信がついてきました。あとは、イベントでかっこいいアーティストを見たり、周りで躍動してるアーティストとかをみると気合いが入りますね。

troy:いろいろみんなでやるのが難しかった時期もあって、mihiroを慰めに行ったときがあったんですよね。「でもさ、もう友達とは思ってないんだ」ってぼそっと言われた。“ビヨンドの関係値”を求めたからには、もう仲良しこよしには戻れないって意味だったんだと思います。俺は「仲良しをどれだけ続けられるか」って、当時はそういう考えでした。



ー「Love&Peace」という共通の想い。同じ方向を向いて進み続けても、消さない自分らしさ。


好きな音楽や音楽とのつながりも、大切にしていることも多様だ。ライブ後にも個々の印象をはっきりと思い出せるくらいに、一人ひとり輝くメンバーが集まっているのだが、その異なる強みや感性を寄せ、活かし合うことが、Y’s CAMPの唯一無二の楽曲を作っているのだと思わされた。

生まれ育ちが同じことだけでなく、各々が自分を磨くこと、そして互いに尊敬を意をもって接し合うことで築かれてきた、揺るがない関係性が背後にあるように感じる。

一人ひとりが「Y’s CAMPらしい」音楽を生み出すために欠かせない要素。
後編では、Y’s CAMPをつくるMC、DJ以外のメンバーについても語ってもらった。



リリース情報

Y’s CAMP『C.A.M.P』
リリース日:2024年2月14日(水)
トラックリスト:
1. Camp Fire
2. Roll UP(feat. TENMA&RYU)
3. Popeye(feat. tity&RYU)
4. Wet Leaves(feat. mihiro, ISHI&tity)
5. My Space(feat. RYU, Rui&tity)
6. Chasing(feat. ISHI, troy&RYU)
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アーティスト情報

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