【後編】俺ららしいけど、自分らしい。東京発のヒップホップクルー Y’s CAMP が愛にあふれた音楽を作り続けられる理由



2021年に結成した、東京発の“ジャンルレス”ヒップホップクルー Y’s CAMP。Rui、tity、RYUらを中心に世田谷で結成されたYURINOKI AVENUEと、TENMA、mihiroらが所属するYellowGangがY’s CAMPの前身であり、学生時代(メンバーによっては、幼少期からの幼馴染)からの友人同士がつながり、自然とクルーが大きくなっていったという。MC7人とDJ1人、Creative Membersたちの総勢13人の大所帯だ。


前編では、MCとDJに焦点をあて、メンバーそれぞれの「自分らしさ」がどのように形成されてきたのか。そしてそれがいかにクルーY’s CAMPの強み、唯一無二性を示す要素になっているのかについて紹介した。


ー「ただの友だちって関係でもない。生半可な関係でやってたらすぐ崩れるから」


後編では、より「Y’s CAMPらしさ」に迫るために、メンバーであると同時に「友だちであり仲間である」という関係性に焦点を当てていく。出会い、自然と生まれてきた役割、そして少しずつ変化していく環境のなかでも変わらないものとは?MC、DJたちの役割について、そしてCreative Membersたちについても語ってもらった。



MC: TENMA、mihiro、RYU、Rui、troy、tity、ISHI
DJ: TAKUMU
Creative Director:Tigre Aoki
Video Grapher :YAMA-SAMA, NOW
Maneger




「地元の奴ら」と「友達思いの仲間」が集まっている。
ーY’s CAMPのなかの「それぞれの役割」はどんなものだと認識していますか?

tity:Ruiにはビジョンとか、“見えるもの”(みんなが見えないようなもの)があって。ただ、それを言語化するのが苦手だから、俺とかManagerとかが、Ruiの思っていることを言語化しています。

TAKUMU:RYUとかもそうだけど、小学校から一緒でRuiのことをわかっているからこそ、要約できるんですよね。

tity:意見がまとまらないときに、最終的に決断を下すのはTENMAですね。

TENMA:メンバーの意見を聞いて、いろんな条件からベストなものを選ぶようにしています。

ISHI:(自分は)お客さんと一緒に楽しみたいから、そこをキャッチするようにはしてるかな。楽しくないやつを一人も作らないってのが、俺の役割みたいな感じだと思います。

mihiro:確かにムードメーカーみたいなところあるかもね。

RYU:ISHIは盛り上げ役だよね。
俺の役割… バランスをとることかな。ライブとか制作とかもそうだけど、バランスをとって、みんながやりやすいようにしたほうがいいかなって。「自分」ももちろん出したいんだけど、チームとしてそれを意識する役かなって思ってます。

tity:RYUはフラットにする(平らにする)役割を持っていると思ってて。同じ空間にいるときに、別にすごい騒いだりもしないし、ただ一応その中に入って話は全部聞いて、必要なときに手を加えるみたいな感じですね。

mirhio:俺が一番気をつけてるのは「地に足をつける」かなって思っています。次のステップを目指すメンバーが多いけど、俺はそうじゃなくて(順序立てて)「ちょっとライブやっていこうよ」とか「曲制作からまずやるべきでしょ」って、必要なタイミングでいう感じかな。

tity:「音」についていえば、Ruiが一番音の作り方とかがわかると思います。ただ、俺も仕事でライブ配信とかをやる側だったり、自分でもビートを作ったりもしててちょっとわかるから、そこら辺はサポートしています。

あとRuiに言われたのは、「お前にしか見えていない細かいもの」ってこと。みんながどうでもいいってことでも気になったりするから、もちろん意見が通らないときもあるけど。意外とそれが役に立つときがあったりもしますね。


ー「Y’s CAMP」として運営していくためには、音楽づくり以外にもやるべきことが出てきますよね。Creative Membersのみなさんは具体的に何をしているのでしょうか?


troy:一人は、お金のことに一番詳しくてお金まわりのことやってくれています。あとは、「こうなりたい。そのためには、こうすればいける」って計算もふくめ、ロジカルに考えたうえでアイディアを出すのもそいつしかいないですね。

tity:イベント管理はもちろん、いろいろマネジメントしてくれてるメンバーもいます。資金の運用方法とか、これからの戦略を考えてるのは、彼の強みが生きている部分だと思いますね。「こうしたほうがうまくいくんじゃない?」っていう意見を、フラットに考えたうえで出せる視野の広さと、盤面の理解度があるのに加えて着眼点が鋭い。

Manager:Tigre Aokiは映像の責任者みたいな立場。一番映像関係の知識、編集技術があるから、MVとかプロモーション映像まわりを全部やってくれています。

YAMA-SAMA、NOWには、Tigre Aokiが、少しずつ知識を落としていってくれています。YAMA-SAMAは、好きなことを追求するオタク気質(いい意味)を持っているから、吸収が早い。好きな映像とかを参考に、カメラの技術を伸ばしています。NOWは、メンバーの小さな変化にも気づく繊細な感性を持っているから、必要なカットを逃さないですね。


ーメンバ―以外にもY’s CAMPの音楽づくりに携わっている人はいますか?


Rui:曲作りは、鼻歌で歌って、ビートメーカー/ギタリスト/ベーシストのtheelu(テル)に起こしてもらっています。theeluは、自分たちの言葉を音に変えてくれる人。実際に俺らと遊んだり、個別で話したりすることで俺らの特徴を掴んでくれています。Hiphopを普段から聴いてくれたりして、俺らと合うリファレンス曲を探してくれたり、MIXやビートなどを出してくれます。

tity:よくみんなで行く地元のバーで出会ったんですよね。マスターにはバンド組んでベースやってるやつがいるから、ずっと「会わせたい」って言われてて。初めて会ったときの印象は、音楽にすごい詳しくて、ラムのロック飲んでて渋いなって感じ。そこから仲良くなって、俺が先に一緒に音楽(『urbanship』)作って、そこからY’sでも、って流れでした。


ーMC、DJだけじゃなくて、Creative Membersのみなさんも「自分らしい」役割で、サポートしてくれているように感じます。それぞれ、どんなきっかけで一緒にやることになったのでしょうか?


troy:お金まわりやってくれてる奴は大学が一緒。一緒にやることになったのは、俺がずっとオファーしてたからです。地元の奴らと絡めたくて、絡めたくて。能力高いし、めっちゃいいやつ。地元の奴らには、そいつみたいな“テクニシャン”はいないんです(笑)

地元の奴らとはジャンルが違うけど、“友達思い”っていうベースが一緒だから、一緒にできるんだと思います。あいつは一番のファンでもあるし。

Manager:Tigre Aokiは、TENMA、mihiroの元々のクルー、YellowGangでも映像系をやってました。YellowGangのメンバーとはずっと一緒に遊んでたこともあって、自然な流れで。外注としてお金を払って映像を作ってもらおうとしてたけど、「俺もY’sメンバーの1人だからお金はいらない」って言ってくれて、正式にジョインした感じですね。

YAMA-SAMA、NOWは、地元世田谷の友達。元々「みんなでやりたい」ってのがあったから、自然と必要なところを埋めてくれていました。ラップをやるだけのクルーは多くいるけど、「自分らで全て完結できるクルー」として成し遂げることに意味があると思っています。


ー地元世田谷での偶然の巡り合わせが、Y’s CAMPの音楽を作っているんですね。ライブを始めたのは、どこ、誰から繋がって?

ISHI:*EECっていうクルーがいて。Camp Fire(Y’s CAMP主催ライブ)の前身は、そいつらがイベントやりますってなったときに呼んでもらいました。

TENMA:Camp Fireは2023年8月で4回目。7th Floor(渋谷)でイベントをやらせてもらえるようになったのも、EECがきっかけです。EECのTaina Keeは、Tigre Aokiと小学校から一緒。レコーディングやミックス、マスタリングまでサポートしてくれるときもあってあいつには感謝しています。それに、よく喋る人間だから一緒に飲むと楽しい。
Y’s主催以外のライブも、今は友達伝いで誘いを受けることが多いですね。本当にありがたいことに、呼ばれることが増えてきたのは2023年からです。


*Each Eyes Country(イーチ・アイズ・カントリー):
東京都を拠点に活動するEach Eyes Countryは、MC/プロデューサー Taina KeeとMC Esosa Veeによる2MCヒップホップデュオ。Each Eyes Countryのプロデューサーも務めるTaina Keeは、現代的なサウンドとダイナミックで軽快な展開を持ったトラックメイクを特徴としている。ポップセンス溢れるTaina Keeのフロウと硬くエネルギー溢れるEsosa Veeのバースが輝く彼らの楽曲は一貫して自己愛の大切さを訴えている。

Taina Kee、2024年リリースの楽曲「Moon Skater」についてはこちら

 

個々の「自分らしさ」を重ね、うまれる「Y’s CAMPらしさ」。
ー それぞれのこだわりなどは、どうブレンド(すり合わせ)してきたんでしょうか?
 

mihiro:みんなライブごとに意識が変わっていきましたね。例えばセトリで言えば、最近はY’s CAMPのショーとして、みんながこの曲が適切かっていう視点で見れるようになってきた。

ISHI:俺も個人を出しすぎちゃうときがあったけど、最近は周りを見れるようになってきたかなと思います。

mihiro:毎回揉めて揉めてを繰り返して、そうなってきたって感じだね。

TAKUMU:そうだね。揉めることというか、意見を出し合うことをマイナスには捉えていないです。仲悪いとかじゃないから。

Rui:むしろ仲いいからじゃない。

ー「友達」から一緒に音楽を作っていく「メンバー」になったり、音楽づくりを支えてくれる仲間になったり。お互いに抱く感情、関係性はどう変わってきましたか?


Rui:根本的な仲の良さは変わらない。でも音楽を深くやり始めてから、良い意味で仲良いだけじゃなくて、お互い「音楽でちゃんやってるから」っていう距離感になっています。お互い考えていることがわかるし、コミュニケーションをとらなくても、「任せられるな」っていう人もいますね。

TENMA:友達の枠を超えて、家族。その分、普段なら出さない感情を出すときもありますね。でも、それは信頼しているからこそなのかもしれないです。

ISHI:生半可な関係じゃすぐ崩れると思ってて。中途半端な関係じゃないからこそ、自分らの想いを素直に話せてる。ぶつかることはよくあるけど、そのおかげで未来でより笑える方向に常に動けていると思います。それと一人ひとりが似てるようで違うからこそ、自分にないものを誰かが持ってて、信頼して任せることができるのかな。

troy:一個一個のライブについても出る・出ないとか、来月の動き(活動内容)をどうするのかとか。友達関係でいたら「楽しそう、やりたい」だけの単純な判断基準で終わっちゃうところを、今は真剣に人生をかけているので本気でぶつかって意見しています。

自分の人生も背負ってるし、自分の関係している人の人生も背負ってるし。いろんな人が関わってるっていうこともあって、自分たちの選択の重みが変わってきたからこそ、ただの仲の良い友達ではなく痛いところも突きあう心の仲間になったのかなと思います。

TENMA: こんな人数が20代半ばになって、遊びながら、笑いながら、楽しみながら、音楽をやれてるのは奇跡的なことに近いと思います。10代のときには想像していなかったことが今起きてるから、それがおもしろい。


ーみんなにとって「Y’s CAMP」とは? 


tity:Y’s CAMP=コミュニティ。同じ価値観で生きている人たちが固まって、でかくなっていく。お客さんもY’s CAMPみたいなイメージ。良い意味でアーティストっぽくない親しみやすさは、俺らにしか出せないと思いますね。

Rui: Y’s CAMPは、体に張ってる根そのもの。 

ISHI:子供の頃から、自分を作ってくれたのはY’sメンバーのおかげだと思うし、音楽を始めたきっかけもY’sだから、今の俺の中心って感じですね。Y’sとして多くの人に音楽を届けるために、大きくなりたいと思っています。もし他のクルーに入ってたとしたら、人生かけてまで音楽をやろうとは思わなかったかな。他の好きな友達と音楽をやるのも最高だけどね。

mihiro:これからY’s CAMPが成長していっても、互いを思ったり、笑わそうとする気持ちは変わりたくないかな!


ー「自分らしく」生きられる場所

初めてライブに行って彼らの音楽を聴いたとき、まず伝わってきたのは「感謝」だった。お客さんへの感謝、ステージに立てることへの感謝。インタビューを進めていくとそれだけではない。

MC、DJ、裏方メンバーが互いの存在へのありがたみを忘れず、良さや強みを引き立て合い、引き出し合う。「自分らしく」生きられる場所が自然と築かれているようだった。

周りに目を向けてみると、自分らしくいさせてくれる場所があり、自分も誰かの自分らしさを支えている。そして「揺るがない自分」の確立は、自分の努力はもちろん、周りの支えがあってこそ実現できるのだと気づかされた。

この記事を読んだ方、そしてY’s CAMPの曲を聴いた方には、ぜひ「自分らしくいられる場所」(いつも行くあのお店かもしれないし、週一回会う友達と過ごす時間かもしれないし…)を思い浮かべてもらえるとうれしい。


リリース情報

Y’s CAMP troy, Ryu, TENMA『365』
リリース日:2024年7月24日(水)
配信リンク

アーティスト情報

Y’s CAMP

Y’s CAMP2021年に結成した7MC+1DJのジャンルレスHip-Hopクルー。
(MC:RYU,troy,Rui,mihiro,TENMA,ISHI,tity DJ:TAKUMU)
1st Singleで自らを「Prayers」と称し、「Love & Peace」をテーマに音楽を通じて彼等の世界観を広めている。 メンバーそれぞれのルーツを落とし込んだジャンルにとらわれないサウンドに、自身や仲間、家族へ向けた個性的なリリックが織り成すグルーヴ アプローチで人々の心を掴んでいる。 楽曲制作に携わるアーティストだけでなく、アートワーク、ビデオディレクション、マネジメントを担当するメンバーも所属する大所帯クルーである彼 等がつくりあげる主催イベント「Camp Fire」や「Gwan Gwang」では界隈の注目を集め、人々の心を繋いでいる。


Instagram / YouTubeSoundCloud

地元世田谷の地、下北沢にて初のワンマンライブを開催!

イベント名:among us
主催:Y’s CAMP
開催日:2024年12月22日(日)
開催場所:ADRIFT(東京都世田谷区北沢3-9-23)
チケット情報:
 事前 3,500円+1D(※予定枚数売れ切れ次第終了)
 当日  4500円+1D
 ペア  8000円+1D
参加方法:ご登録いただいたメールアドレス宛に、主催者(ys.camp96@gmail.com)より開催までにイベント詳細についてご案内します。
問い合わせ先:
yscamp_inc(Instagram)/ys.camp96@gmail.com

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