【Y’s CAMPインタビュー】3rd EP『what It Is』リリース “1日の連続が未来を形作る”
2021年に結成した7MC+1DJのジャンルレスHip-HopクルーY’s CAMPが2024年10月30日(水)、3枚目のEPプロジェクト『what It Is』をリリース。
今年8月に発表した2nd EP『365』に続く本作では、見えない将来に不安を感じ現代を生きる人々に向けて、繊細に続く『1日』の連続が未来を形作ることを伝えている。
「巡り来る1日」をRui、troy、mihiroが中心となり、時間軸別に表現。7曲が収録されており、1日をテーマにした構成となっている。各曲が時間帯ごとに並んでおり、朝から夜までの流れを反映しているのが特徴だ。
アーティスト情報
2021年に結成した7MC+1DJのジャンルレスHip-Hopクルー
(MC:RYU,troy,Rui,mihiro,TENMA,ISHI,tity DJ:TAKUMU)
1st Singleで自らを「Prayers」と称し、「Love & Peace」をテーマに音楽を通じて彼等の世界観を広めている。メンバーそれぞれのルーツを落とし込んだジャンルにとらわれないサウンドに、自身や仲間、家族へ向けた個性的なリリックが織り成すグルーヴアプローチで人々の心を掴んでいる。楽曲制作に携わるアーティストだけでなく、アートワーク、ビデオディレクション、マネジメントを担当するメンバーも所属する大所帯クルーである彼等がつくりあげる主催イベント「Camp Fire」や「Gwan Gwang」では界隈の注目を集め、人々の心を繋いでいる。
出演歴:りんご音楽祭2023
ストリーミングで聴く
本作の客演にはシンガーソングライターのVela、ラッパーのVue du monde、Esosa Vee(Each Eyes Country)を迎え、サウンドプロデュースはY’s CAMPのメインプロデューサーでもあるtheeluu、Vue du mondeが担当。アートワークはKIICHI SIMOYAMA(Native Wood(s) / Greened mind))によって描かれている。Y’s CAMPと深い親交のあるアーティストを迎えることで、コミュニティとしてのY’s CAMPも表現。
なお、本作は12月22日に迫ったY’s CAMP初のワンマンライブ 「among us」に繋がるコンセプトEPとなっている。
今回、MCのRui, troy, mihiro, DJのTAKUMU, サウンドプロデューサーのtheeluuに話を伺った。インタビューでは、彼ら自身のストーリーや感情、届けたいメッセージを、EPでどのように表現しているかを深掘りしている。楽曲タイトルの背景や、今回のEPでの挑戦について聞く中で、彼らの音楽が現代を生きる人々に響く理由が見えた。
– EP『what It Is』についていろいろと聞かせていただきたいのですが、まず、タイトルにはどういった意味が込められているのでしょうか?
troy:24時間の流れっていうコンセプトは、タイトルを決める前から決まっていたので、そのコンセプトをベースに俺とTAKUMUの2人で電話しながらタイトル『what It Is』は決めました。
TAKUMU:完璧なもの(本作で言うと、1日を理想の通りに過ごすこと)を求めるのも大事だけど、なかなか思い通りにいかないこともたくさんある。俺らY’s CAMP自身それはよくわかっているし、その完璧じゃない姿にも「よさ」があることもわかっています。完璧に決めにいって、予定通りにならなくても「You know what it is(そんなもんでしょ)」って意味が込められています。
troy:最初は「You know what it is」って言葉が浮かんだけど、TAKUMUから「what it is」のほうがいいと言われて、確かにそうだなって。
TAKUMU:受け手側に寄り添えるように、あえて抽象度が高い名前にしました。
troy:あと「I」を大文字にしようって提案も多分TAKUMUだけど、これは自分自身の「I」、個人・インディビジュアルの「I」を示しています。
TAKUMU:「I」を大文字にしている理由は、この作品は自分視点で表現された作品で、聴き手側も自分視点で聴いてほしいなと思ったから、一人称にフォーカスを当てました。あと、Ruiとtroy主導で始まったプロジェクトなので、2人分の「I」を表現して『what It Is』になっています。
– 各収録曲のタイトルに込められた意味についても、教えてください。
TAKUMU:まずイントロの『Same Door』についてですが、毎日同じドアをくぐって1日が始まり、終わっていきますよね。「同じドアをくぐって、毎回違う景色を見ている」ことへの意識が薄れている人が多いと思います。「扉は同じだけど、違うストーリーが流れている」のを意識してほしいという意味合いが込められています。
『6:00 am』は、1日をテーマとしたEPとして、時間をテーマにした曲名が1つ欲しいということで命名された気がします。
troy:『Junction』は、theeluuくんのビートだけでなく、違う色を入れるために他のビートメーカーを探してたりしてて。もともとRuiが繋がってたVue du mondeくんが作ってるから、一緒にやろうよってなりました。その後、他のY’s CAMPのメンバーとも仲良くなり、繋がりが広がっていったこともあって、車の高速道路のジャンクションのようにいろんなつながりが交差するイメージで、TAKUMUが「Junctionじゃね」ってなって、すぐに決まったかな。
EPのタイトルでもある『what It Is』に関しては、1番そのバイブスが感じられる曲なので、このタイトルになりました。
mihiro:『MAZ€』は夜の雰囲気とお酒をテーマにしていて、飲みすぎて頭がぼんやりした状態とかけて、「迷路」のように見える現実でも、とりあえず進んでいこうというメッセージが込められています。
troy:『Moments』は、Ruiがフックで「飛んでいっては消えていくweekend」と歌っているように、「今この一瞬を大切にする」っていう瞬間を意識した曲なので、このタイトルになっています。
TAKUMU:アウトロの『lulu』は、縷縷(繊細にも絶えず続いていく様子)という言葉で、1日のようにこのEPもサイクルしてもらえたらなと思ってつけました。表記は単純に可愛いと思ったので小文字でluluです。
– イントロとアウトロでは同じメロディを使っていますね。最後まで聴くと、ひとつの物語のようだと感じました。
theeluu:今回のEPのコンセプトやイメージみたいなものはRuiから最初に聞いていたんですけど、そのコンセプトと、参加するY’s CAMPのメンバーのイメージから、あのフレーズは自然と出てきたと思います。ほとんど手癖でもあるんだけど。
イントロとアウトロで同じフレーズを使っていることへの解釈は、リスナーに委ねたいですが、強いて言うなら、変化を伴って循環している感じを大事にしたかったです。
アウトロに時計の音が入っているのも理由はいろいろありますが、ひとつはエンディングだけど続きがある感じを印象づけたかったのと、もうひとつは夜寝るときに冷蔵庫の音とか、時計の音とか、普段なんでもない音が目立って聞こえたりすることがあると思うのですが、そのイメージでこの音を使いました。
– 今回のEPは各曲が時間帯ごとに並んでいますが、全体を通して聴くことで、「繰り返される1日」をより強く感じられました。
troy:通して聴くことで、1番ピュアな状態を感じられると思います。俺自身はこれまで「いいかも」と思った曲を先に聴く聴き方しかしてこなかったのですが、作り手になってみて、1曲目から最後まで聴くことのよさに気づきました。今作もまず一度は通して聴いていただきたいかな。
マネージャー:今回のEPは特に1日の流れを意識して構成しているから、それぞれの1日に当てはめて聴いてみてほしいです。いろんな人にこのEPを聴いてほしいけど、今までアルバムとかEPを1から最後まで通しで聴いたことがない人に、ぜひ聴いてみてほしいです。
– 7曲中とくにお気に入りのパートを教えてください。
troy:個人的には『MAZ€』のEsosa veeのバースが特にフィットしているなと思っています。すごくかっこいい。ビートにめちゃめちゃ合っていて、ラップが上手い。
Rui:確かに。超かっこいいよね。異次元。
troy:俺もRuiもコンフォートゾーンを表現するのは得意だけど、それだけでは退屈してしまう。だから、Vue du mondeくんやEsosa veeの存在がスパイスになるよね。
Rui:2人だけのEPでもいいけど、そこはもうY’s CAMPで出しているから。客演が入ることで、特別感と繋がりを見せられるかなと思います。俺がけっこう好きなのは、『Moments』のtroyの「足るを知る」。あと「有るが難で有難い」とか。日本人のスピリットを感じます。漢字で分解して表現しているのがすごくおもしろいなって。troyっぽいです。
mihiro:俺は2回目のフック前のブリッジが特にお気に入りです。バースっぽく自由に書けた部分だから。フックはみんなに聴いてほしいので、キャッチーなメロディーやわかりやすい言葉を選んでるんですけど、バースでは自分をもっと出せる。フックももちろんお気に入りだけど。
-今回のEPで新しく挑戦していることはありますか?
Rui:『MAZ€』と『Junction』は挑戦的でした。『お酒がテーマ』だったり笑、ラップメインの曲だから、メロディをどうつけようか考えるのが苦戦したな。俺は地声が高いから、低いキーを歌うのが難しい。それでも諦めずに、新しいスタイルに挑戦したのがこの2曲です。
mihiro:『MAZ€』のビートの種類がアフロビートというジャンルで、これまでのY’s CAMPにはなくて、俺にとって挑戦でした。
theeluu:今回のEPで大きく感じるのはやっぱりfeatの多彩さ。『6:00 am』ではVelaがfeatしてくれてるのですが、たぶんY’s CAMPの曲としては女性シンガーがfeatになっている曲は初めてだと思うから、作っていてすごい新鮮でした。楽曲に関してはけっこういろんなことに挑戦していて、それこそイントロとアウトロみたいにコンセプトをいつもより大事にしたりとか。イントロの最初のギターは、家の前の道端でiPhoneで録った音をそのまま使っていたり、『6:00 am』のtroyのフローを一緒に考えたりして、全体を通して楽しくできた印象です。
– 最近、どんな瞬間に「今を大切にしよう」や「今を楽しもう」と感じましたか?
Rui:わりかし何でも楽しいかもしれないです笑。このEPを作ったことで、より24時間にフォーカスできるようになったというか。昔は、1日1日をこなすことが多かったんですけど、今は1日に何があったか寝る前に振り返ることで、こうやってご飯を食べたりとか、そういう当たり前に過ごせてる毎日に感謝できるようになったかな。その積み重ねが今もこの先も豊かにしてくれる。今回のEPを通してより強く思いました。
mihiro:常に感じてるっていうのはあるかもしれません。そのポイントで感じることじゃないような気もします俺は。
troy:幸せな悩みだけど、忙しいと物事をこなしている感があって、記憶に残らないのがちょっと寂しい。だからライブとかリハーサルでもそうだけど、それ以外でみんなで集まるタイミングは、大事にしないとなって思いました。各々のライフステージの変化などで環境が変われば、脳も変わるから、そうすると思考が変わるじゃないですか。思考が変わると行動も変わるので、タイミングを見つけて合わせていかないと絶対にずれてきてしまう。ずれるのが自然なんですけどね。
– このEPを通して、特に届けたいメッセージは何ですか?
Rui:このEPを聴いた人が、当たり前に過ごせている毎日に、少しでも感謝できるようになってくれたらうれしいです。現代社会では、未来について考えすぎて不安になっている人が多いと思います。僕自身もそうでしたから。先のことを考えて不安になる必要はなくって、まずは今を生きることで自ずと未来は明るく照らされます。
– このEPが特にどういう人に届いていたらいいなと思いますか?
troy:同じ価値観の人には届いてほしいなと思います。同じ価値観っていうのは、リリックを聴いて共感してくれる人。全部がマッチしなくても、この1ラインだけいいなみたいなのでよくて、それで印象に残る曲とかもあると思うから。
mihiro:Y’s CAMPを知らない人に聴いてほしいのは毎回そうですが、全然ヒップホップを聴いていない大衆に聴いてほしいです。2nd EP『365』は、どちらかというとヒップホップ好きには響くと思うのですが、今回はRuiのキャッチーなメロディーや声もあるのと、周りの人もかなり巻き込んでいるから。なんなら、普段音楽に触れていないような人にも聴いてもらえたらうれしいですね。
リリース情報
『what It Is』
- Same Door -Intro
- 6:00 am(feat. Vela, Rui, troy)
- Junction(feat. Rui, troy, Vue du monde)
- what It Is(feat. troy&Rui)
- MAZ€(feat. Esosa vee, mihiro, Rui)
- Moments(feat. Rui&troy)
- lulu -Outro
リリース日:2024年10月30日(水)
配信リスト
下北沢にてY’sCAMP初のワンマンライブを開催!
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イベント名:among us
主催:Y’s CAMP
開催日:2024年12月22日(日)
開催場所:ADRIFT(東京都世田谷区北沢3-9-23)
チケット情報:
事前 3,500円+1D※終了しました
当日 4,500円+1D※当日券は現金でのお支払いになります
ペア 8,000円+1D
問い合わせ先:
yscamp_inc(Instagram)/ys.camp96@gmail.com
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